ベートーヴェンより9年遅く生まれ1年早く没した女性作曲家の先駆け、ルイーゼ・ライヒャルト（1779-1826）の歌曲29篇を収めた本邦初録音盤。プロイセンの宮廷楽長でゲーテとも親交があった父を持つ彼女は、二人の婚約者との死別やナポレオン戦争によって家と財産を失うなどの試練のなかで、ハンブルクで音楽家として活躍。音楽学校などを設立して成功させた。歌曲はサロンで演奏するために、友人でもあった同時代の詩人たちの作品に書かれ、伴奏も単純ながら美しい旋律に溢れている。彼女の熱心な研究者でもある櫻井利幸のやさしいバリトン歌唱に親しみがもてる。
文：東端哲也
（ぶらあぼ2023年6月号より）
【information】
CD『夜の紡ぎ歌 ルイーゼ・ライヒャルト歌曲集 ／櫻井利幸』
L.ライヒャルト：スミレ、花の中の花、「夜の讃歌」より、歌びとは行く、坑夫の歌、落ち着かない眠り、正しい愛よ、小夜曲、私が嘆いているときに邪魔をしないでおくれ、郷愁、小フクロウ、夜の紡ぎ歌、失われた幸せ、父の嘆き、森を通って、春の花、「ゲノフェーファ」より〈憧れ〉 他
櫻井利幸（バリトン）
平島誠也 栗田桃子（以上ピアノ）
佐藤亜紀子（リュート）
ナミ・レコード
WWCC-7982 ￥2750（税込）