オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が3月17日、本拠地の石川県立音楽堂コンサートホールで記者発表会を行い、来シーズン(2023年9月〜24年7月)の定期公演プログラムを発表した。
会見には22年9月からOEKアーティスティック・リーダーを務める広上淳一が出席。
「オーケストラはその街の代名詞。就任以来、OEKを知ってもらうための種まきを続けているが、この半年間で定期会員が200名増加するなど、少しずつ芽が出てきていると実感している。来季はその芽を育て、私たちの想いが市民に浸透しはじめるシーズンにしたい」と期待を述べた。
定期公演はこれまで同様、フィルハーモニー・シリーズ8公演、マイスター・シリーズ5公演、ファンタスティック・オーケストラ・コンサート3公演の全16公演が予定されている。
広上は3公演に登場。
「471回定期(9/16)には、私がアメリカにいた頃から付き合いのあるクラリネット界の巨匠、リチャード・ストルツマンさんを招きます。驚くほど美しいモーツァルトの協奏曲をお楽しみください。同公演では池辺晋一郎さんの新曲(交響曲第11番)、北村朋幹さんが独奏を務めるピアノ協奏曲第1番も取り上げます。池辺さんは音楽界の生き字引。選り好みせず、すべての曲目を楽しみにしてほしい」
とプログラムについて述べた。
472回定期(9/21)では、永久名誉音楽監督の岩城宏之へのオマージュを込めて、同氏もお気に入りだったというシチェドリン編曲のカルメン組曲、2018年のARDミュンヘン国際音楽コンクールピアノ三重奏部門で優勝した葵トリオとベートーヴェンの三重協奏曲を披露。
シーズン・フィナーレIII(2024.7/28)では、広上もお気に入りだという、久石譲作曲のオーケストラ・ストーリーズ「となりのトトロ」、 グレイ作曲「サンダーバード」 から広上セレクション版が演奏される。
その他、「石川県のすべての学校をまわることが私の夢」とこだわりを持つ県内の学校公演や、定期公演に関わる県外のツアーを受け持つという。
ラインナップには、「若い才能のある指揮者やソリストを紹介したい」という広上の意向も反映されている。
2021年のショパン国際ピアノコンクール第2位のアレクサンダー・ガジェヴ(23.10/26)、同年のARDミュンヘン国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝した岡本誠司(11/30)、指揮者として客演するウィーン・フィルの首席第2ヴァイオリン奏者のクリストフ・コンツ(24.1/27)や、OEKパーマネント・コンダクターの川瀬賢太郎(24.3/9、7/6)、OEKコンダクターの松井慶太(4/14)らコンクールの入賞者を筆頭に注目の若手が名を連ねる。
海外アーティストでは、コロナ禍での延期を経てベートーヴェン交響曲チクルスの最終回を飾る前音楽監督で桂冠指揮者のマルク・ミンコフスキ(3/15)、ヴァイオリンソロのほか、指揮も手がけるバロックの鬼才、エンリコ・オノフリ(1/8)などが登場する。
「ぜひメンバーから“推し”を見つけてほしい」と語る広上。就任以来続けている、自身も出演する金沢駅ナカのレストランでのトーク&コンサートや、終演後の舞台で行われる楽員によるトークイベント「ポストトーク」など、ファンと触れ合うイベントも継続していくという。
広上がOEKと取り組む2シーズン目。吹き込まれた新しい息吹からどんな音楽が生まれるのか。オーケストラ・アンサンブル金沢のこれからに注目したい。
オーケストラ・アンサンブル金沢
https://www.oek.jp