白石光隆のセンスが光る小品集。2021年9月8日東京文化会館でのライブ録音だ。抒情的なJ.S.バッハの「ラルゴ」で心をほぐされ、ベートーヴェンの「熱情」ではあらためてこの作品のスケールの大きさを知る。トレネのシャンソンに基づく「6つの歌曲」ではガラリと洒落た雰囲気となり、R.シュトラウスの《サロメ》より「7つのヴェールの踊り」で妖艶なトーンとなる。ローゼンブラットがシューマンの「トロイメライ」をジャズ風にアレンジしたアンコールピース「ドリーミング」で締めくくり、“人生とはこんなものさ”と愛と微笑を投げかけるかのような一枚。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2023年3月号より)
【information】
CD『アパッショナータ/白石光隆』
J.S.バッハ(サン=サーンス編):ラルゴ/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」/トレネ(ワイセンベルク編):「6つの歌曲」より〈街角〉/R.シュトラウス(ジンガー編):歌劇《サロメ》より「7つのヴェールの踊り」/ローゼンブラット:ドリーミング 他
白石光隆(ピアノ)
収録:2021年9月、東京文化会館(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4514 ¥3300(税込)