吉松隆オーケストラ傑作選 吉松 隆の〈英雄〉

現代日本を代表する作曲家が独自の世界へと誘う

 近年、吉松隆再評価の機運が高まっているが、その立役者の一人が原田慶太楼。東京交響楽団正指揮者として先日同楽団と初リリースしたのが、第1交響曲「カムイチカプ」。さらに3月には交響曲第3番をメインとした“吉松個展”を指揮する。

 吉松の音楽は20世紀後半の価値観の多様化を反映して、現代音楽がジャズやロック、ワールドミュージックなど様々な語法とドッキングしているが、第3番はそれらが壮大に組み合わせられた堂々たるシンフォニーだ。激しい不協和音を響かせた後、弦が細かく震えながらエネルギッシュに展開する第1楽章、打楽器の力強いパルスで歓喜のうちに迎える大団円に挟まれて、鳥の歌を乗せた軽快なスケルツォやチェロのたっぷりとした哀歌が聴こえてくる。前半には吉松のトレードマーク、鳥をモティーフにした美しい作品群(「鳥は静かに…」「若き鳥たちに」)、そしてプログレッシヴ・ロックを管弦楽に編曲して大ヒットした「タルカス」と、コアファンにも嬉しく、吉松入門にも最適なラインナップ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年2月号より)

2023.3/11(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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