「コントラバス」には「ことば」が含まれている。このアルバムはそんな冗談みたいなお題をテーマに全力で遊んでみた野村誠「コントラバスのことば」をはじめ、普段は陽の当たりにくいこの楽器を、テクストに直接ぶつけて何が出るかを試した一大実験集である。大正期の青春文学の煌めくロマン(中村匡寿)から現代詩のイメージのジャンプ(波立裕矢)まで、ノアの方舟伝説(佐原詩音)や禅の連作絵画のインスピレーション(溝入敬三)から多重人格的パフォーマンス(川島素晴)まで、その実験はまことに楽しい遊戯の連続だ。ことばに触発されたコントラバスのアクロバットをとくとご覧あれ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年2月号より)
【information】
CD『ことばとこんとらばす 歌と語りとコントラバスと/近藤聖也 他』
波立裕矢:「シュタイネ」より〈11.ヘルツシュラーク(鼓動か)〉/佐原詩音:Noah’s Ark/川島素晴:12人のイカれたベーシスト/中村匡寿:The Ascension of “K”/溝入敬三:十枚の絵/野村誠:コントラバスのことば
近藤聖也(コントラバス) 薬師寺典子(ソプラノ) 松平敬(バリトン) 吉田瑳矩果(ハープ) 水野翔子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
コジマ録音
ALCD-134 ¥3080(税込)