ツィメルマンが自ら録音を長らく希望していた祖国ポーランドの作曲家、シマノフスキの作品から、全年代の楽曲をまんべんなく収録。初期の前奏曲では、ピアノをロマンティックに豊かな抑揚で歌わせ、中期の「仮面劇」ではハーモニーのミステリアスさを明瞭なタッチで際立たせる。後期のマズルカでは、内向的な深い音色を聴くことができる。再び初期に戻る「ポーランド民謡の主題による変奏曲」は、民族音楽に深い愛着を持っていた作曲家への共感が滲み出る、熱をもった演奏。シマノフスキ生誕140年の今、彼の全体像を世に紹介したいという奏者の目的が果たされている。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2022年11月号より)
【information】
CD『シマノフスキ:ピアノ作品集/クリスチャン・ツィメルマン』
シマノフスキ:9つの前奏曲 op.1より第1番・第2番・第7番・第8番、仮面劇、20のマズルカ op.50より第13番〜第16番、ポーランド民謡の主題による変奏曲
クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ)
ユニバーサルミュージック
UCCG-45059 ¥3080(税込)