2023年2月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2022年11月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 「イースター(復活祭)」は、キリスト教と関係なく、日本でも独自のイベントになりつつあるが、キリスト教国でイースターの前2月から3月にかけて行われる「カーニバル(謝肉祭)」の方は、まだ日本では馴染みが薄い。その2月、ヨーロッパではカーニバル企画を催す劇場も少なくなく、クラシック界においても、特に「ケルン歌劇場」で長年この時期に開催されているカーニバル公演「チェチーリア・ヴォルケンブルク」は大変に有名だ。そのため、通常公演はほぼ休止となるので、本号では同劇場の2月分の紹介は割愛させていただいた。

 また、カーニバルの趣旨とは直接関係ないとは思われるものの、毎年2月には、現代音楽にスポットを当てたフェスティバルが特にドイツ・フランスあたりを中心に開催されるのが最近の特徴的なトレンドと言える。本文に取り上げただけでも、「ベルリン・フィル・ビエンナーレ」、「エルプフィルハーモニー・ヴィジョンズ」、「現代音楽ビエンナーレ」(hr響)、「エクラート現代音楽フェスティバル」(SWR響)、「フェスティバル・プレサンス」(フランス国立管/フランス国立放送フィル)など注目のフェスティバルが並ぶ。この中では、特にペトレンコがリゲティの「ロンターノ」「アトモスフェール」、ラトルがB.A.ツィンマーマンの「ユビュ王の晩餐のための音楽」などを振るベルリン・フィルの演奏会は、むしろ現代音楽の古典とも言えるラインナップで、その他の公演内容を見てみると、まったく知らないような作曲家の新作が次々に登場し、ヨーロッパ現代音楽の潮流を知る上では注目すべき2月と言ってもよさそうだ。既知の作曲家としては、チン・ウンスクの新作が紹介されるフランス国立放送管(ロト指揮)、フランス国立放送フィル(ナガノ指揮)などが特に要注目。

 現代音楽を離れて、いつも通りの注目公演を探すと、ラトルがバイエルン放送響で継続的に行っているワーグナーの演奏会形式「リング」ツィクルスで、2月に取り上げられる「ジークフリート」がまず目にとまる。アニア・カンペの歌うブリュンヒルデも興味深いが、バーバラ・ハンニガンが森の小鳥で登場するのが洒落ている。ラトルはその他チェコ・フィルにも客演し、相変わらずエネルギッシュな活動が続く。ウィーン国立歌劇場のR.シュトラウス「サロメ」は長年定着してきたバルロク演出に変わる新演出。世の反応はどう出るだろうか。R.シュトラウスでは、ベルリン州立歌劇場の「ダフネ」プレミエ、ハンブルク州立歌劇場の「エレクトラ」なども興味をそそる。ウィーン国立歌劇場ではビエイト演出のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」も楽しみ(シャーガーのトリスタン)。ワーグナーでは、他にドレスデン・ゼンパーオーパーでティーレマンの振る「リング」、シュトゥットガルト歌劇場の「神々の黄昏」と「ラインの黄金」、ジュネーヴ大劇場の「パルジファル」、パリ・オペラ座の「トリスタンとイゾルデ」、英国ロイヤル・オペラの「タンホイザー」、METの「ローエングリン」とコロナ前に戻ったかのような華々しさ。

 アン・デア・ウィーン劇場はプルハー指揮のラルペッジャータによるヘンデル「ベルシャザール」が要注目。ベルリン・ドイツ・オペラのランゴー「反キリスト」の再演、ドレスデン・ゼンパーオーパーのライマン「幽霊ソナタ」、フィレンツェ歌劇場のブゾーニ「ファウスト博士」、テアトロ・レアルのコルセッリ「シロのアキッレ(アキレス)」、ミンコフスキ=レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルのヘンデル「アルチーナ」ツアーなどもどれも注目ポイントが多い。

 オーケストラにほとんど触れられなくなったが、ティーレマン=ウィーン・フィルや大野和士=フランス国立放送フィルなどの他、ロレンツォ・ヴィオッティ指揮のミュンヘン・フィル、ケルン・ギュルツェニヒ管も好演が期待できる。ウィーン響やベルリン・ドイツ響を振るマリー・ジャコーも注目の女性指揮者だ。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)