In memoriam 一柳慧

(C)Koh Okabe

 長く日本の現代音楽シーンを牽引してきた作曲家 一柳慧氏が10月7日、東京都内の病院で亡くなった。89歳。

 1933年、兵庫県出身。作曲を池内友次郎、ジョン・ケージに師事。

 代表作に、1981年NHKからの委嘱により作曲されたピアノ協奏曲第1番「空間の記憶」(第30回尾高賞 受賞)、1988年岩城宏之指揮 東京フィルハーモニー交響楽団により初演された交響曲「ベルリン連詩」、第二次大戦下、多くのユダヤ人の命を救った日本人外交官・杉原千畝をテーマにしたオペラ《愛の白夜》(2006年)などがある。

 10月25日、読売日本交響楽団の定期演奏会で新作「ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲」の世界初演が予定されている。

 1949年および1951年、毎日音楽コンクール(現 日本音楽コンクール)作曲部門第1位。
 その後1952年に渡米、ジュリアード音楽院に学ぶ。ジョン・ケージと偶然性や図形楽譜による音楽活動を展開。その後、建築家でありデザイナーのジョージ・マチューナスが主導した前衛芸術運動、フルクサスに参加する。(日本からは、オノ・ヨーコ、武満徹らも参加している)

 1961年には、黛敏郎、吉田秀和らが立ち上げた「20世紀音楽研究所」フェスティバルの招聘により帰国。欧米の新しい音楽や自身の作品を紹介する。
 1966年、ロックフェラー財団の招聘により再び渡米。その後、ヨーロッパにおいても活発な活動を行い、ケルン現代音楽祭、オランダ音楽祭、ベルリン芸術週間などから作品の委嘱をされる。
 80年代から90年代にかけては、国立劇場からの委嘱により、雅楽、伶楽、声明、舞のための作品を発表、日本の伝統音楽の紹介・発信にも尽力した。

 2002年、第33回サントリー音楽賞を受賞。2004年、パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)のコンポーザー・イン・レジデンスに就任。
 近年においても、神奈川芸術文化財団芸術総監督など、プロデューサーとしても多くの音楽祭やプロジェクトに関わり、積極的に音楽文化の普及に努めていた。

 1999年に紫綬褒章、また2005年には旭日小綬章を受章。2008年文化功労者。2017年日本芸術院賞および恩賜賞を受賞。2018年文化勲章受章。