【CD】《ダイアローグ》ヒンデミット:無伴奏ヴィオラ・ソナタ集/小峰航一

 小峰航一が弾くとヴィオラがよく響く。ヒンデミットの無伴奏という超難曲集でもそれは変わらない。小峰は解説で「ヒンデミットがヴィオラで倍音を多く感じさせる奏法を開拓した」と記しているが、それを具現化できる奏者は多くない。技術の卓越はもちろん、冷静な分析と豊富な経験の成果として、隙のない演奏だが息は詰まらず、豊かな音楽が流れていく。どの楽章もすばらしく、op.25-1の疾風のごとき第4楽章も楽譜が見えるような「丁寧な荒さ」で楽曲の姿を明らかにする。知性の中に艶が浮かび上がる小峰の演奏は、そのまま作品の特長になる。この作品集を愛する人、学ぶ人は必聴。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年10月号より)

【information】
CD『《ダイアローグ》ヒンデミット:無伴奏ヴィオラ・ソナタ集/小峰航一』

ヒンデミット:無伴奏ヴィオラ・ソナタ、同op.31-4、同op.25-1、同op.11-5

小峰航一(ヴィオラ)

録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9047 ¥3030(税込)