脇園彩 メゾソプラノ リサイタル

欧州の主要歌劇場を席巻するするディーヴァの貴重なステージ

(c)Ambra Iride Sechi

 「自分で未来を切り拓く人」── それがメゾソプラノ脇園彩である。日本人離れしたスケールの歌声を持ち、ミラノ・スカラ座をはじめ世界の大歌劇場で活躍。昨年は、新国立劇場でもロッシーニ《チェネレントラ》に主演し、成功したばかりである。

 そこで今回、彼女の経歴を当たってみたら、気づいたことが一つ。脇園は、「歌の道を志したその時から既に、自分の特性を把握できており、それを伸ばすことに人生を賭けた」人であった。イタリア留学時は、言葉が上手く話せず部屋に引きこもったりもしたという。でも、そのたびに彼女は、「ではどうしよう?」と自問自答しつつ乗り越えた。敬愛する大ソプラノ、マリエッラ・デヴィーアと同じく、脇園も「無駄口を叩かず、ひたすら歩む」歌い手なのである。

 深い紅色を思わせる響きを有し、ベルカント・オペラに傾注する脇園。モーツァルト、ロッシーニなどを歌う川口でのステージは声楽ファンなら聴き逃せぬ一夜に(ピアノ:丸山貴大)。名花の「道の究め方」を目の当たりにしていただこう。
文:岸純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2022年10月号より)

2022.10/5(水)19:00 川口リリア 音楽ホール
問:リリア・チケットセンター048-254-9900 
http://www.lilia.or.jp