“いま弾きたい曲”を集めた祈りのプログラム
テーマとして掲げられている「祈り」というキーワードは、有吉亮治が今もっとも客席に届けたいと思う作品を並べていくなかで、ふと行き着いた言葉だという。ピアノ・リサイタルの開催は実に3年ぶり。優れた器楽奏者たちとの室内楽やオーケストラとの共演の経験を重ね、桐朋学園大学では後進の指導にもエネルギーを注ぐ有吉の奏でるピアノは、伸びやかな優しさに富み、作品理解の深さを着実に音にする鋭さを併せ持つ。
そんな有吉が選んだ、ブラームスの内省的な後期作品「3つの間奏曲 op.117」、シューベルトによるメランコリックな表情をもったソナタ第14番、ショパンの情念が映し出されたバラード第2番や「幻想ポロネーズ」といった作品群は、リサイタル名の「音の彼方へ」にもある通り、音楽のその先にある大切なメッセージを届けたいという心を伝える。「『祈り』が『希望』へとつながることを願って」と語るその音楽に、この秋、ゆっくりと耳を傾けたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2022年9月号より)
2022.10/20(木)19:00 浜離宮朝日ホール
問:テレビマンユニオン03-6418-8617
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