「かわいい」と「ケージ」が共振するステージ
昨年度神奈川県民ホールで始動した新シリーズ「C×C(シー・バイ・シー)作曲家が作曲家を訪ねる旅」の第3回が、9月10日に開催される。今注目の旬の作曲家と記念イヤーの作曲家をとりあげ、双方の意外な化学変化を通じて未知の音楽体験をもたらすユニークな企画だ。これまで武満徹と山本裕之、サン=サーンスと川上統という意表をつくカップリングが好評を博してきた。今回は生誕110年、没後30年のジョン・ケージが山根明季子の異色の作品とともに演奏される。奇想天外なアイディアに満ちたケージは、音楽の概念そのものを広げていったが、今回は、柔和な響きの「6つのメロディ」、〈イエスタデイ〉など名ナンバーをコラージュした「ザ・ビートルズ1962-1970」、やや瞑想的な雰囲気の「セブン」など、ケージ初心者でも楽しめる選曲だ。
ケージと対峙するのは、ポップな視覚性を備えた独自の感性で知られる山根である。高度なテクニックに裏打ちされながらも、彼女の音楽は、エンターテインメント性や視覚的な快楽といったこれまでにない感覚に満ちている。山根のキーワードのひとつは「かわいい」。新作初演となる「カワイイ^_-☆d」のほか、「キッチュマンダラかわいい」など、遊び心に溢れ、ヴィヴィッドな色彩が広がる山根ワールドは、ケージとしなやかに共振するだろう。成田達輝(ヴァイオリン)、東条慧(ヴィオラ)、山澤慧(チェロ)ほか演奏者は腕利きばかり。心躍るスリリングなコンサートになりそうだ。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2022年9月号より)
2022.9/10(土)15:00 神奈川県民ホール(小)
問:チケットかながわ0570-015-415
https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/