ペトル・ポペルカ(指揮) 東京交響楽団

注目の気鋭指揮者が振る新ウィーン楽派とラフマニノフ最後の作品

ペトル・ポペルカ (c)Khalil Baalbaki

 当初はマティアス・ピンチャーが指揮する予定の公演だったが、来日できなくなり、代わりにペトル・ポペルカが指揮台に上がる。この指揮者、いったい何者?

 1986年プラハ生まれの36歳。2020/ 21シーズンからノルウェー放送管弦楽団首席指揮者を務め、22年9月からはプラハ放送交響楽団の首席指揮者・芸術監督にも就任するという。ヨーロッパ中堅どころの楽団の舵取りを任された注目の若手だ。作曲家としても活躍しつつ、2010年から19年まで、シュターツカペレ・ドレスデンの次席ソロ奏者を務めたコントラバシストという多彩な顔をもつ。

 彼の指揮をディスクや動画で確認すると、鮮やかなアーティキュレーションの切り替えは、指導を受けた一人であるペーテル・エトヴェシュを思わせつつ、出てくる音楽はずいぶんダイナミック。日本ではまだ名前を知られていない若手有望株を真っ先に指揮台に呼ぶことで定評のある東京交響楽団。激しく期待していい。

 プログラムは、ピンチャーが振る予定だったウェーベルンの「夏風の中で」と、ラフマニノフの交響的舞曲がそのまま残っているのが嬉しい。若きウェーベルンによる爽やかなロマン派風作品で始まり、生と死のコントラストが鮮烈なラフマニノフの最後の作品で終わるという趣向だ。その合間に、ベルクの歌劇《ヴォツェック》から3つの断章が入る。輝かしいキャリアを築いてきたソプラノ森谷真理が、その豊穣な声で魅了すること間違いなし。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2022年8月号より)

第702回 定期演奏会 
2022.8/20(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp