【CD】小さな空 武満徹ソング・ブック/村松稔之&高田ひろ子

 ジャズ・ピアニスト、高田ひろ子の弾く武満ソングをライブで聴いたことがある。メロディや言葉の隅々に音を沁みこませ、その世界を広げていくセンスに驚嘆しながら、夢見心地なひと時を過ごした。このディスクはその記憶を裏書きしてくれただけでなく、さらにカウンターテナーの新星・村松稔之の、この世のものとも思えない声という魅力まで加わっている。母音を美しく響かせ、日本語の自然な韻律を引き出す崩し具合が絶妙だ。高音域にも独特なまろみと強さがある。武満ソングのクラシカルなアプローチには、いつも小さな違和があった。これぞ正解、という演奏に初めて出会った気分だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年8月号より)

【information】
CD『小さな空 武満徹ソング・ブック/村松稔之&高田ひろ子』

武満徹:明日ハ晴レカナ 曇リカナ、見えないこども、恋のかくれんぼ、死んだ男の残したものは、島へ、MI・YO・TA、翼、三月のうた、うたうだけ、小さな空、めぐり逢い、雪、さようなら、○と△の歌

村松稔之(カウンターテナー)
高田ひろ子(ピアノ)
安ヵ川大樹(ベース)

カメラータ・トウキョウ
CMCD-28384 ¥3080(税込)