ソロや室内楽でも活躍するN響首席クラリネット奏者・伊藤圭と、多彩な活動を続けるピアニスト長尾洋史による、ドイツ後期ロマン派の作曲家レーガーが残した全3曲のクラリネット・ソナタを網羅したアルバム。柔らかくも哀感が漂う伊藤の音色は、こうした“ロマン派の黄昏”的な音楽に相応しく、長尾のピアノの雄弁さも光っている。第1番と第2番は大きな影響を受けたというブラームスの同ソナタを彷彿させるし、第1番の清澄さと第2番のエレガンスの対照も妙味十分。より多彩な第3番も鮮やかだ。晦渋なイメージのあるレーガー作品の美点に気づかせてくれる好盤。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年7月号より)
【information】
CD『レーガー:クラリネット・ソナタ集/伊藤圭&長尾洋史』
レーガー:クラリネット・ソナタ第1番〜第3番
伊藤圭(クラリネット)
長尾洋史(ピアノ)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9045 ¥3080(税込)