「松本和将の世界音楽遺産」と銘打たれたリサイタルはもれなくライブ録音され「松本和将ライブシリーズ」としてCDリリースされているが、本作はその第9弾。このピアニストの構造把握の力量はベートーヴェンやブラームスなどのドイツ作品で十全に発揮される感ありだが、ここでのフランスレパートリーでは粒立ちの良く芯の強い、それでいてふくよかな美音を駆使して誠に聴き応えある名奏を展開。「夜のガスパール」におけるデモーニッシュさ、フランクでの見事な声部の独立性。「亡き王女〜」では淡い中にも誠に細やかな色調の変化が聴かれて美しさの極み。松本はフランスものも卓越している。
文:藤原聡
(ぶらあぼ2022年6月号より)
【information】
SACD『〈松本和将ライブシリーズ9〉 ラヴェル:夜のガスパール』
ラヴェル:水の戯れ、夜のガスパール、亡き王女のためのパヴァーヌ/ラモー:ガヴォットと6つのドゥーブル/フランク:プレリュード コラール フーガ
松本和将(ピアノ)
収録:2019年11月、東京文化会館(小)(ライブ)
タクトミュージック
TACD-00158 ¥3300(税込)