飯守泰次郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ドイツ音楽における名匠が響かせるシューマン・ツィクルス完結編

飯守泰次郎 (c)K.Miura

 桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎と東京シティ・フィルによるシューマン交響曲全曲演奏シリーズの第2弾が6月11日に開催される。今回演奏されるのは、シリーズ完結編となる交響曲第3番「ライン」と同第4番。

 飯守泰次郎といえば日本におけるドイツ音楽の泰斗として真っ先に名前が挙がるマエストロである。ドイツの歌劇場で長く活躍し、コンサートでも古典派からロマン派のレパートリーを中心に数々の名演を披露してきた。ドイツの伝統に根差したシューマンを聴くうえで、これほどふさわしい指揮者はほかにいない。

 シューマンの交響曲は4曲すべてが奇跡のような傑作であり、どんな組み合わせであっても聴きどころには事欠かないが、今回のプログラムは好対照をなす2作品が並んだといえるだろう。第3番「ライン」は第1楽章冒頭の雄大な主題が示すように、スケールが大きく高揚感にあふれている。変ホ長調にふさわしく「英雄」的なキャラクターを持ち、4曲のなかではもっとも輝かしい交響曲だ。一方、第4番は複雑な成立の経緯を持つ。もともとは第1番「春」と同年に書かれた交響曲だが、10年後に改訂されて第4番の番号が付いた。若き日の情熱と後の円熟味が融合して、ほかの3曲にはない複雑な味わいを生み出している。

 昨年12月に好評を博した第1弾に続いて、今回もシューマンの真髄を堪能できるにちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年5月号より)

第353回 定期演奏会 シューマン交響曲全曲演奏シリーズⅡ
2022.6/11(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp