クァルテットの饗宴2022 エベーヌ弦楽四重奏団

現代屈指のクァルテットの真骨頂に触れる2夜

左より:ラファエル・メルラン、マリー・シレム、ガブリエル・ル・マガデュール、ピエール・コロンベ
(c)Julien Mignot

 エベーヌ弦楽四重奏団は痛快だ。彼らのステージは、音楽の楽しさを何度でも思い出させてくれる。クラシックとかジャズとか、そういうことではなくて、それはもっと大きく、音楽を楽しんだ、という喜びに近い。

 なぜって、多種多様なレパートリーをしっかり手の内に収めながら、どの曲に臨むときにも鋭くパッションを燃やすからだ。クールで冷静なときも、情熱的で、はたまたアグレッシヴなときも、彼らの演奏の芯には確かな熱気と求心力がある。ジャンルを超えて刺激的なコラボレーションも含め、ここ20年の室内楽シーンで、もっとも活発でクリエイティヴな弦楽四重奏団と称えていい。世界有数のバンドと呼んでも大げさではないだろう。

 1999年にフランス人の学生たちが組んだグループで、パリでイザイ弦楽四重奏団に師事し、2004年ARDミュンヘン国際音楽コンクールで優勝。15年にヴィオラの新鋭を迎えたが、17年の来日時には若きマリー・シレムが彼の代役を務めて新たな息を吹き込み、そのままメンバーに定着した。

 クラシックの王道はもちろん、ジャズやポピュラーのアレンジも得意とするかの冒険者たちが来たる初夏、2様のプログラムで紀尾井ホールを沸かす。いずれもウィーン古典派のハイドンやモーツァルトで幕を開け、ヤナーチェクやショスタコーヴィチとともに20世紀へ歩む。そこから初日はシューマンでロマン派へと遡り、翌夜はジャズに進んで、即興的な才気を炸裂させる。時代も地域も文化も自在に旅するエベーヌ四重奏団の真骨頂に触れる好機となるだろう。
文:青澤隆明
(ぶらあぼ2022年5月号より)

CLASSIC プログラム
2022.6/16(木)  
CLASSIC+JAZZ プログラム
6/17(金)
各日19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp
https://kioihall.jp