マリンバで紡ぐ“歌心”
「マリンバ」と一言で言っても、そのアプローチの仕方は演奏家それぞれ。布谷史人の持ち味は温かで包み込むような音色だろう。7歳でピアノ、17歳でマリンバに転じた布谷。山形大学を経てボストン音楽院の修士課程を終え、数々の国際コンクールで実績を重ねて、今やドイツを拠点に国際的奏者に。彼は言う。「歴史の浅い楽器で深みのある演奏をしたいと追求し、行きついた先は“歌”だった」。
超絶技巧のヴァイオリン作品へマリンバを駆って挑むワックスマン「カルメン幻想曲」、心地よい癒しに満ちた植松伸夫「イヤーズ&イヤーズ」、名曲の引用を交えつつ、時に声までも演奏表現に採り込む安倍圭子「マリンバ・ダモーレ」。あるいは「ブエノスアイレスの冬」などに聴く、情熱的なピアソラのタンゴの調べ。多彩なレパートリーを貫いているのは、“歌心”に他ならない。ピアノの坂野伊都子と共に臨むリサイタルは、布谷の“唯一無二”の音楽世界に触れる、素敵な機会となるだろう。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)
7/12(土)18:00 浜離宮朝日ホール
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp