柴田智子(ソプラノ)

心にひびく日米の新たな名曲を多彩なゲストとともに

 ソプラノ歌手の柴田智子が自らプロデュース、演出・構成を手がける「自由で素敵なコンサートシリーズ」のVol.6のタイトルは「Cocoro N.Y−Japan Modern Melodies」。2月27日、サントリーホールのブルーローズで開催する。

プレヴィン、バーンスタイン…アメリカの歌を集めて

 前半は、アメリカ音楽のスペシャリストとしてニューヨークを拠点に活動してきた柴田ならではのプログラム。

  「ぜひ聴いていただきたいのは私と同世代の作曲家、ベン・ムーア(1960−)の〈戻らぬ夏〉とリッキー・イアン・ゴードン(1956−)の〈その朝に〉と〈星〉。アメリカン・シアターの今を担う作品を私のソロでお届けします」

 続いて、生前は指揮者として高名だった2人の作曲家のアリア、アンドレ・プレヴィンのオペラ《欲望という名の電車》からブランチの〈魔法が欲しい〉を柴田、レナード・バーンスタインの音楽劇《キャンディード》からクネゴンデの〈華やかで浮気っぽく〉をゲストの中野亜維里(ソプラノ)とデュエットで届ける。偶然にも追悼となったスティーヴン・ソンドハイムのミュージカル《リトル・ナイト・ミュージック》からの〈悲しみのクラウン〉は柴田のソロ、続く〈毎日は小さな死の重なり〉も中野とのデュエットだ。

 「中野さんは二期会の声楽家としては珍しく、バーンスタインをレパートリーにしています。2020年の二期会主催オペレッタ《メリー・ウィドウ》(レハール)でヴァランシェンヌのアンダースタディーをされていたご縁です」

 「日本ではアメリカの音楽を好きで演奏する人が本当に少ないのです。今は亡きソプラノの伊藤淑さんが40年前に孤軍奮闘されていた頃と、状況はたいして変わりません。アメリカというと即ポップスで、クラシックのレパートリーが顧みられる機会が乏しいのが現状です。ヨーロッパの真似ではなく、アメリカ独自の発展を遂げた作品を継続して紹介、歌い続けることは私の重要なライフワークです」と、柴田は語る。前半の最後はビートルズやカーペンターズの名曲をクラシック調のアレンジで歌う。

“ことば”を大切に、ジャンルを超えた音楽の魅力を

 後半は日本語の歌。二期会のバリトン歌手で作詞・作曲やオペラ台本執筆も手がける宮本益光の〈うたうだけ〉〈私の歌〉、村松崇継の名曲〈いのちの歌〉、柴田の自作〈サイレント・ソング〉などとともに、ピアニストとして出演する追川礼章(あやとし)に委嘱した新作〈明日へのことば〉世界初演も。また、文化的に東洋にも接点を持つフィンランドに出向き、自ら探した現地の伝承歌〈カレリアの丘〉をリアレンジ。日本語歌詞を付け、あたかも日本の歌のように歌う盛りだくさんのメニューだ。

 「世界の名曲を自分の足で見つけ、日常会話ができない言語の作品には自分で日本語の訳詞を書き、紹介しています」

 追川、中野のほかに、ヴォーカルの今井学、ピアノの近藤大夢(ひろむ)もゲストに迎える。

 「今井さんは英語歌唱が素晴らしく、フランク・シナトラ、ペリー・コモ、トニー・ベネットらに連なるシンガーになる可能性があります。今回はカーペンターズをご一緒するほか、スタンダードのメドレーを歌っていただく予定です。近藤さんは追川さんから『リハーサルを担当してくれて素晴らしいので、ぜひ一緒に』と申し出があり、おふたりでバーンスタインなどのアメリカ作品を連弾で演奏します。コロナ禍の中で必要最小限の編成をとらなければならず、ヴァイオリンやコントラバス、打楽器などを入れるとリハーサルのスケジュールも錯綜してしまうので、“ピアニスト2人のオーケストラ”が活躍することになりました」

 さらには、シンガーソングライターの石崎ひゅーいが作曲、菅田将暉の歌でヒットした〈虹〉も柴田、中野、今井のアカペラ三重唱で紹介するなど、柴田の感性で選りすぐった歌の数々で、鮮やかにステージを染め上げる。
取材・文:池田卓夫
(ぶらあぼ2022年2月号より)

柴田智子の自由で素敵なコンサートシリーズ Vol.6
Cocoro N.Y−Japan Modern Melodies【配信あり】
2022.2/27(日)14:45 サントリーホール ブルーローズ(小)
問:TSPI 03-3723-1723/二期会チケットセンター03-3796-1831
https://salondart.art/lc-lending/shibata-6/(会場チケット&配信)
カンフェティチケット0120-240-540
https://www.confetti-web.com/tomokoshibata2022
http://www.tomokoshibata.com