2022年5月の海外公演情報

Musikverein

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2022年2月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

【ご注意】
 新型コロナウイルス感染の影響により、本欄に掲載した音楽祭や劇場等の公演予定について、今後、重大な変更や中止・延期等の措置が施されて実際の公演内容と異なってしまう可能性も十分あり得ます。その点をご留意いただき、最新情報は必ず各音楽祭・劇場等のウェブサイトでご確認いただきますようお願いいたします。

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 開催はコロナ次第ではあるものの、5月になると音楽祭イベントが次々に登場してくる。まずはこれらから眺めてみよう。

 最初に、ウィーンのムジークフェラインで開かれる「ムジークフェライン・フェスティバル:A!」。コンツェルトハウスと毎年持ち回りで5〜6月に開催される、昔の「ウィーン芸術週間」の流れを汲む音楽祭だが、今年はまたユニークな名前を付けたものだ。「A!」というのは、オーケストラのチューニング音でもある「A」の音から発想を広げるコンセプトのようだ。内容はなかなか豪華。ブロムシュテットやムーティの振るウィーンフィル、ネルソンスの振るボストン響とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ティーレマン指揮のシュターツカペレ・ドレスデンに加え、バルトリ、レヴィット、内田光子らのリサイタルも控えている。

 これに劣らぬ陣容で臨むのは「ハンブルク国際音楽祭」。ケント・ナガノ指揮のハンブルク・フィル、ヤーコプス=フライブルク・バロック・オーケストラのウェーバー「魔弾の射手」、ネゼ=セガン指揮のバイエルン放送響、ゲルギエフ指揮のミュンヘン・フィル、シャイー指揮のスカラ・フィル、カンブルラン指揮のハンブルク響に加え、ウィーンと同じく、ネルソンス指揮のボストン響とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、それに若き注目株、マケラ指揮のオスロ・フィル、メッツマッハー指揮のアンサンブル・モデルンなど、これまた、注目公演満載の音楽祭。これに続くは「プラハの春国際音楽祭」。毎年恒例の開幕演奏会でのスメタナ「わが祖国」は、意表を突いてバレンボイム=ウェスト=イースタン・ディヴァン管が担当する(その後、ミラノやパリで客演公演もあり)。チェコ・フィルはロバートソンやアルトリフテルによる客演指揮だが、ロト指揮レ・シエクルのフランス音楽集もラインナップされているなど、必ずしもチェコ色に染まらない特色を出している。ドイツのマンハイムに近いシュヴェツィンゲンで開催される「シュヴェツィンゲン音楽祭」は古楽系の珍しい作品を上演することで知られているが、今回は、逆にカリツケの「ネモ船長の図書室」という世界初演の現代作品を序盤に持ってきた。もちろん、ガッツァニーガ「アルチーナの島」という18世紀後半のオペラもある。その他、スタジオーネ・フランクフルトや、ヴァイオリンのゲオルギエヴァ、ピアノのメルニコフの演奏も面白い。なお、この「ドレスデン音楽祭」や「フィレンツェ五月音楽祭」は詳細な予定が現段階ではまだ未発表のようなので、後追い掲載したい。

 一般公演のオペラでは、何号か前で、こんな人手のかかる演目は来シーズン以降か、と迂闊にも書いてしまったベルリオーズ「トロイアの人々」がバイエルン州立歌劇場でプレミエとして出る。ただし指揮は音楽監督のユロフスキーではなくルスティオーニ。ユロフスキーはペーターゼンがマルシャリンを歌う注目のR.シュトラウス「ばらの騎士」を振る。同劇場では、プリンツレゲンテン、キュヴィリエ、フォルクスの各劇場を使ったハースとモンテヴェルディの組み合わせ3プロダクションも大変興味深い。他には、ヴィンタートゥーア劇場(チューリヒ歌劇場関連)で菅尾友が演出するハイドン「月の世界」、スカラ座のヴェルディ「仮面舞踏会」プレミエ(シャイー指揮)、ボルドー国立歌劇場でのミンコフスキ指揮のモーツァルト「ダ・ポンテ三部作」、英国ロイヤル・オペラのサン=サーンス「サムソンとデリラ」、ベルリン・ドイツ・オペラのシュレーカー「宝捜し」なども面白そうだし、個人的にはケント・ナガノの振るプーランク「カルメル派修道女の対話」(ハンブルク州立歌劇場)も見落とせない。その他、オーケストラでは上述の音楽祭での公演及びそのツアー公演に加えて、ラトルがベルリン・フィルで指揮する趣向を凝らした曲目には、いつもながらの選曲眼に驚かされる。
(曽雌裕一・そしひろかず)

(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)