【CD】RAVEL&FALLA/神谷悠生

 冒頭に置かれたラヴェル「前奏曲」の、歌い出しの5つの8分音符だけで、その透明感の虜になってしまう。ソリストとして活躍する一方、ベルリン芸大修士課程でさらなる研鑽を積む俊英・神谷悠生。デビュー盤で取り上げたラヴェルとファリャの作品を、「一見、まるで異なるように思えて、音楽に対する視点に共通するものを感じる」と彼は言う。単にダイナミックと捉えられがちな作品にあっても、決して音を荒らすことなく、逆に施される精緻な彫琢。そして、すうっと自然に心に染みわたってくる清冽なる響き。2人の作曲家の佳品を、有機的に結びつけてゆく。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2022年1月号より)

【information】
CD『RAVEL&FALLA/神谷悠生』

ラヴェル:前奏曲、ソナチネ、亡き王女のためのパヴァーヌ、夜のガスパール/ファリャ:火祭りの踊り、スペイン舞曲第1番

神谷悠生(ピアノ)

sonorité
SNRT2103 ¥3080(税込)