萩原麻未(ピアノ)

煌めくようなピアニズム

(C)Akira Muto
(C)Akira Muto

 権威あるジュネーヴ国際コンクールのピアノ部門で8年ぶり、そして日本人初の優勝者に輝き、萩原麻未に熱い注目が寄せられてから早4年が経つ。これまでの期間、彼女はパリに拠点を置き、オーケストラとの共演や室内楽でその鮮やかな演奏を披露してきた。しかし独奏を存分に堪能させてくれる機会は、少なくとも東京では2011年11月のデビュー・リサイタル以来、無かった。
 6月27日、紀尾井ホールで待ちに待ったそのチャンスがやってくる。あの強烈な集中力と閃きに満ちた彼女のピアノ、そして恐らく数々のアンサンブルで一層培われたであろう音楽性をたっぷり味わえると思うと、期待で胸が熱くなる。
 曲目は充実のフランスものが並ぶ。フォーレのノクターン第1番変ホ短調、第4番変ホ長調という同主調の2曲に、ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」と「喜びの島」が続く。ラヴェル作品からは「高雅で感傷的なワルツ」と「ラ・ヴァルス」を取り上げる。萩原の鋭く、美しく、そして繊細にして悪魔的な音色が、これら比較的よく知られた作品を色鮮やかに描き出すことだろう。そしてユニークな作品がもう一つ。アメリカの現代作曲家ジェフスキーの「ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルース」だ。連打やクラスターによる轟音も飛び出す曲だけに、むしろセンスの良さとコントロール力が不可欠だ。煌めくような萩原のピアノで是非とも聴いておきたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2014年6月号から)

★6月27日(金)・紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp