鈴木優人(チェンバロ) J.S.Bachを弾く 1 ―平均律

出発点ともいうべきホールで、バッハに浸る新シリーズ始動

(c)藤本史昭

 鈴木優人の快進撃が止まらない! 指揮者として、バッハ・コレギウム・ジャパンの一員として、オルガニスト、チェンバロ奏者、ピアニスト、作曲家として、さらにはラジオやTVのパーソナリティ、プロデューサー、音楽祭の監督などなど。その多岐にわたる才能と因習にとらわれない発想力、そして父親譲りの勤勉さが相まって、とりわけコロナ禍の日本の音楽界を活気づけてきた。

 この秋、その鈴木がトッパンホールと組み、チェンバロ奏者としてバッハの鍵盤作品とじっくり向き合う「J.S. Bachを弾く」というシリーズが立ち上がる。今のところ3年で3公演という企画で、11月11日の第1回は、鍵盤奏者にとっての旧約聖書とも呼ばれる「平均律クラヴィーア曲集第1巻」全曲を取り上げる。これまでにも何度か弾いているが、「この曲集はバッハが37歳のころに作曲されたもので、いまの僕と年齢も近いし、シリーズのスタートに相応しいと思った」と抱負を語る。

 鈴木にとって、トッパンホールは自らの原点ともいえるホールで、2007年の初登場以来、さまざまなプロジェクトをともに実現させてきた。クリアでほどよい残響のある音響は、チェンバロの細かいニュアンスを伝えるにはぴったりで、フーガなどを集中して聴くにも適した空間だと考えている。チェンバロで弾く「平均律」の魅力は、ピアノとは違って、「自然と即興的な要素が入ってくること」だと話すとおり、トッパンホールの空間に鈴木のイマジネーション豊かな一期一会のバッハが拡がることだろう。
文:後藤菜穂子
(ぶらあぼ2021年11月号より)

2021.11/11(木)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com