バッカスで始まり、バッカスに終わる
欧米での快進撃が続いている大野和士。この6月には2008年から首席指揮者として腕を振るっているフランスのリヨン歌劇場管弦楽団との、2度目の来日公演が実現する。前回(2009年)はまだ就任して1年ほどだったが、早くも美しくまろやかな響きでフランス音楽の精髄を届けてくれたのが記憶に残っている。あれから5年の熟成期間を経て、大野と団員の間にはさらなる深い信頼関係ができあがったようである。指揮者がイメージするものを団員が棒の動きや表情から即座に読み取って表現する。その当意即妙のやりとりが楽しめそうだ。木管楽器が大活躍する今回のプログラムでは、フルートにランパル国際コンクールに優勝した上野星矢を客演首席奏者として迎え、パワーアップした同団の名手たちが繰り広げる競演にも注目したい。
東京オペラシティ公演の演目には、オペラティックな仕掛けが随所に施されている。プログラムはルーセルの「バッカスとアリアーヌ」に始まり、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、さらにバレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)へと続く。大野はプログラミングにあたって、酒神バッカスをテーマにした音楽を両端に置いたというが、極彩色に彩られたワルツが間を取り持つという配列がなんとも心憎い。また「ダフニスとクロエ」では、大自然との交感を通じて愛に目覚める男女の心の機微や歓喜の踊りを、同歌劇場合唱団が無言歌で表現する。近代フランス音楽の名曲を辿る旅路で、豪華絢爛とした音絵巻が繰り広げられることだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年6月号から)
★6月30日(月)・東京オペラシティ コンサートホール Lコード:38695
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp
他公演
6/27(金)・愛知県芸術劇場コンサートホール Lコード:45212
問:東海テレビチケットセンター052-951-9104
6/28(土)・よこすか芸術劇場 Lコード:38132
問:046-823-9999
6/29(日)・大阪/フェスティバルホール Lコード:59408
問:06-6231-2221