【CD】ブルックナー:交響曲第9番/尾高忠明&大阪フィル

 高評価を得ているコンビの、8番、3番に続くブルックナー交響曲第3弾。尾高忠明が若き日より傾倒し、演奏を重ねてきた9番の満を持した初録音である。その相手が大阪フィルである理由も聴けばよくわかる。まずは根底にある朝比奈隆以来の伝統、すなわち腰の据わった重層的な響きが味方する。しかも尾高はそこにこまやかな表情を付与し、同フィルも即応していく。それでいて場面変化はごく自然。全体に思いのこもった音が耳を惹きつけ、なかでも解脱した終結部が感動を呼ぶ。大伽藍的ブルックナーではあるが、それに留まらない9番特有の美質が表出された稀有の名演!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年10月号より)

【information】
CD『ブルックナー:交響曲第9番/尾高忠明&大阪フィル』

ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)

尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団

収録:2021年2月、フェスティバルホール(ライブ)
フォンテック
FOCD9851 ¥3080(税込)