【CD】夜の詞 能声楽とチェロのための作品集/青木涼子&エリック=マリア・クテュリエ

 能からインスピレーションを受けた外国人作曲家は多いが、能の謡を直接素材にした作品はほとんどなかった。演奏者がいなかったから。この一見ニッチな領域に登場したのが青木涼子だ。能と声楽をドッキングさせ熱視線を浴びている。夜をテーマにしたこのセカンドアルバムでは、作曲家たちは無常観の世界に深く分け入り、古代ラテン文学とのコントラストを見出したりしていく。先日来日したアンサンブル・アンテルコンタンポランのクテュリエのチェロは、地を這う謡に鋭く切りかかり、空中戦を仕掛けていく。このスリリングなデュオ、遠隔セッションをミックスして仕上げられたというから驚きだ。時代は確実に進化している。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年10月号より)

【information】
CD『夜の詞 能声楽とチェロのための作品集/青木涼子&エリック=マリア・クテュリエ』

ヘレナバレーナ:夜/J.マン:四/T.ヴァリー:能に注ぐ5つの眼差し/A.ゲッダ:物の怪/J.ペトラスケヴィチ:月

青木涼子(能声楽)
エリック=マリア・クテュリエ(チェロ)

コジマ録音
ALCD-131 ¥3080(税込)