コルトーやケンプといった伝説的ピアニストに師事し、1959年にミュンヘン国際音楽コンクール第1位を獲得したフリードリヒ・ヴィルヘルム・シュヌアー。デトモルト音楽大学の学長を務めるなど教育者としての印象が強いが、ピアニストとしてもドイツ音楽の伝統を伝える質実剛健な演奏スタイルの優れた存在である。そんな彼が今回リリースしたのはベートーヴェンの後期ソナタ。技巧的にも表現的にも卓越したものが求められる作品だ。透明感がありながら芯のある音色によって鮮やかな色彩を描きつつ、しっかりとした構成感で築き上げられる演奏は、作品の魅力を丁寧に伝えてくれる。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年10月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集/フリードリヒ・ヴィルヘルム・シュヌアー』
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番〜第32番
フリードリヒ・ヴィルヘルム・シュヌアー(ピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4095-96(2枚組) ¥4400(税込)