【会見レポート】新国立劇場バレエ団 ピーター・ライト版『白鳥の湖』(新制作)制作発表

 新国立劇場バレエ団の2021/22シーズンが、ピーター・ライト版『白鳥の湖』(新制作)で開幕する。10月23日の初日を前に、吉田都舞踊芸術監督、本公演で主演をつとめるダンサー9名が登壇し会見を行った。

左より:速水渉悟、渡邊峻郁、井澤 駿、奥村康祐、福岡雄大、吉田 都、米沢 唯、小野絢子、柴山紗帆、木村優里

 本作は吉田の舞踊芸術監督就任第1作目として、20年10月に上演を予定していたが、コロナ禍の影響により延期。今年3月に行われた21/22シーズンラインアップ発表会で吉田は、「(20年9月の監督就任から)ダンサーと1年一緒に仕事をして、『白鳥』ではより深い作品創りができるのではないか」と語っていたが、より稽古を重ねたいま「結果的に完璧なタイミングで『白鳥』を上演できる」と意気込む。

 今年で初演から40年を迎えるピーター・ライト版(1981年初演)は、英国をはじめ世界で上演される人気プロダクション。各キャラクターの人物造形も明確で、英国らしい演劇的要素が盛り込まれた、ドラマ性を重視した展開が特徴だ。

 現在94歳のピータ・ライトは、吉田の才能を見出した恩師でもあり、本作は吉田自身バーミンガム・ロイヤル・バレエ時代に「コール・ド・バレエから参加し、初めて主役をいただくなど、ほぼすべての役を踊った」と、思い入れの演目。
「シーズンはじめに『白鳥』を選んだのは、バレエの古典に立ち返ろうと思ったからです。ライト版はガリーナ・サムソワのロシア版がベースで、ロジカルでわかりやすく、舞台上の全員が役柄によって何をすべきか、そこにいる理由やそのときの心情が細かく決まっています。亡き王の葬儀のシーンから始まりますが、これはその後のドラマを予想させる伏線になっています。『白鳥』にはさまざまな振付があり、ピーター版はまだ40年ですが、良いところを残しながら彼なりの解釈が入った、作品として成功している『白鳥』の一つだと思います。華やかな感じとはまた印象が違う、シェイクスピア劇をみているようなイメージです。この作品を通じて、ダンサーには踊る喜びだけでなく演じる楽しさも味わってほしいです」

 今回の上演にあたり、衣裳とセットが新調されるのも見どころの一つ。吉田はコロナ直前の20年2月に衣裳の打ち合わせのためイギリスを訪れたという。
「コロナ禍で一人一着作っているため、すごい数を製作していただいたのですが、バーミンガムやロイヤルバレエで使用されたデザインそのままが再現されています」

吉田都舞踊芸術監督

 続いて、主演ダンサー9名が登壇。オデット / オディール役の米沢唯、小野絢子、柴山紗帆、木村優里、ジークフリード王子役の福岡雄大、奥村康祐、井澤駿、渡邊峻郁、速水渉悟が現在の思いを語った。

米沢唯「私にとって『白鳥」は修行。今年4月に、吉田監督から指導を受け、牧阿佐美先生の全幕を踊りましたが、初めてこの演目が『楽しい』『面白い』と思いました。今はワクワクしながらリハーサルをしています」

小野絢子「昨年叶わなかった本作が上演できること、いまバレエ団が上演に向けて動き出し、自分がそこにいられることが嬉しくたまらない、そんな毎日です。私たちダンサーにとっては舞台がすべてで、一人ひとりの心に深く残る上演にしたい」

左より:米沢 唯、小野絢子、柴山紗帆、木村優里

柴山紗帆「待ちに待った『白鳥』、今回は井澤駿くんと初めて踊らせていただきます。都監督になってから今まで、一年を通して演技の部分をたくさん勉強してきたので、もっと追求していきたい。ファーストソリストに昇格しましたので、その自覚を持って一つひとつの公演をを大切に、お客様により良い時間をお届けできたら」

木村優里「『白鳥』は1作で主役の2つの異なるキャラクターを演じわける醍醐味があり、本番ではどんなドラマが生まれ、私の心身に何が起きるかすごく楽しみです。ゲストコーチの佐久間奈緒さん(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)に教えていただけることを本当に幸せに感じています」

福岡雄大「ご指導してくださっている方々の期待を裏切らないよう、そしてドラマティックな『白鳥』をお届けできるよう、バレエ団スタッフ一同切磋琢磨して精進しますので、きっとお楽しみいただけると思います」

奥村康祐「『白鳥』はロシアバレエの代表作ですが、ピーター・ライト版は英国バレエらしさが詰め込まれていて、細かいマイムや繊細な感情表現、難しいテクニックが必要とされますが、やりがいを感じています」

左より:福岡雄大、奥村康祐、井澤 駿、渡邊峻郁、速水渉悟

井澤駿「王子役は、僕にとって一番難しいキャラクター。ちょっと漠然としているからこそ、それぞれのダンサーなりの表現で王子を見せられるので、そこは見どころの一つでもあります」

渡邊峻郁「吉田監督の就任以来、マイムや歩き方など、僕の“踊り方改革”が始まりました。佐久間奈緒さんにもご指導いただき、舞台で生かせたらと思います」

速水渉悟「王子役を初めて踊ります。役に対する想像が広がっていて、一緒に踊る米沢さんとリハーサルで一つひとつ形にしている段階です。東京公演ではいろいろな役で出演するのでそちらも楽しみです」

 なお本公演は、11月7日に長野・サントミューゼ 上田市交流文化芸術センター 大ホール(オデット/オディール:米沢 唯、ジークフリード王子:速水渉悟)でも上演される。会見では、ピーター・ライトより上演に向けたメッセージも披露された。

「この作品は、“欺きによって起こった悲劇の物語”です。真実が裏切りに打ち勝ち、愛が死を凌駕します。恋人たちは欺きによって引き裂かれますが、最後には永遠の愛の世界で再び結ばれます。この物語は、悲しいハッピー・エンディングを迎えるのです。
 ミヤコがこのプロダクションをシーズン開幕の演目として選んでくれたことをとても嬉しく思いますし、新国立劇場バレエ団のダンサーたちが楽しく踊ってくれることを願っています。東京に行くことが叶わないのはとても残念なのですが、彼らの踊りを過去に見ておりますので、彼らならこの『白鳥の湖』へ見事に命を吹き込んでくれることでしょう」


【Information】
新国立劇場バレエ団 2021/2022シーズン
ピーター・ライト版『白鳥の湖』〈新制作〉

振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト
共同演出:ガリーナ・サムソワ

2021.10/23(土)14:00、10/30(土)13:00
オデット/オディール:米沢 唯
ジークフリード王子:福岡雄大

10/24(日)14:00、10/30(土)18:30
オデット/オディール:小野絢子
ジークフリード王子:奥村康祐

10/26(火)13:00、11/2(火)14:00
オデット/オディール:柴山紗帆
ジークフリード王子:井澤 駿

10/31(日)14:00、11/3(水・祝)14:00
オデット/オディール:木村優里
ジークフリード王子:渡邊峻郁

新国立劇場オペラパレス

問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet-dance/

https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/swanlake/