オルガンと声〜フランスと日本の作品が時空を越えて交わる
神奈川県民ホールが持つ、公立ホールでは最古の歴史のあるオルガンが、横浜の海風に乗せてフランスの薫りを運ぶ。今年4月から同ホールのオルガン・アドバイザーを務める中田恵子の就任記念リサイタル「フランス×日本 時空を越えて」。中田は東京藝術大学大学院修了後に渡仏。アンドレ・マルシャル国際オルガンコンクール優勝。帰国後は後進の指導や教会オルガニストとして活躍している。2019年、デビューCD 『Joy of Bach』(独ARCANTUS/キングインターナショナル)をリリース。
コンサート・タイトルが示すように、プログラムは、ニコラ・ド・グリニー、レオン・ボエルマン、モーリス・デュリュフレらのフランス作品、そしてフランスに影響を受けた日本人作曲家として鈴木純明(委嘱新作)と尾高惇忠の作品を軸にした構成。鈴木純明は東京藝術大学とパリ国立高等音楽院で学んだ作曲家。14年の芥川作曲賞を受賞している。注目は、プログラム全体を貫くように組み込まれた、グレゴリオ聖歌に由来する作品の扱いで、対応する聖歌をカウンターテナーの青木洋也が歌って並置するのが面白い。
「感染症拡大で海外に簡単には行けなくなってしまいましたが、音楽は一瞬にして国や時代を飛び越えます。もちろん大聖堂で響くオルガンとは違うけれど、それをも含めてフランス音楽と日本との融合を楽しんでいただけたらと思っています」と中田からのコメント。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2021年10月号より)
2021.10/9(土)15:00 神奈川県民ホール(小)【チケット予定枚数終了】
問:チケットかながわ0570-015-415
https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/