生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会 Vol.5 室内楽版

今年も“のだめ”ワールドが調布にやってくる! 名曲の数々をスクリーンに蘇る名場面とともに

 『のだめカンタービレ』をきっかけにクラシックを聴くようになった方も多いのではないだろうか。コミックの連載終了から10年以上を経た今では、『のだめ』を読んで音楽の道を志したという若い世代の演奏家たちが活躍する時代となっている。そんな『のだめ』の世界をまるごと楽しめるコンサートが、10月2日に調布市グリーンホールで開催される「生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会」。今回は「室内楽版」とのことで豪華な面々が集まった。

『のだめカンタービレ』より

 原作の第15巻がお手元にある方はぜひ読み直してみていただきたい。パリに留学した主人公のだめ(変態&天才ピアニスト)がブルターニュに城を持つブノワ家に招待され、街の教会で初リサイタルを開くことに。千秋(オレ様主義の指揮者)、友人の黒木(真面目なオーボエ奏者)、ターニャ(お色気ロシア人ピアニスト)とともにブルターニュへ向かったのだめは、モーツァルト・マニアの城主ブノワ氏の歓待を受ける。今回の音楽会は、この初リサイタルでのだめが弾いたピアノ曲と、その後の城でのパーティで千秋たちが演奏した室内楽曲を軸にプログラムが組まれているのだ。

 モーツァルトのコスプレをしたのだめがリサイタルで最初に弾いたのが、誰もが知るメロディがきらびやかに姿を変えながら展開していく「きらきら星変奏曲」。のだめの天真爛漫ぶりはそのままモーツァルトと重なるが、「ああ弾け、こう弾け」とあれこれ注文をつけられてきた彼女は、モーツァルトに苦手意識を抱いていた。しかしブノワ氏とモーツァルト談義で意気投合し、千秋とモーツァルトの書簡集を読みながら眠りについたのだめは、リサイタル本番でモーツァルトの音色を見つける。

 そうかと思えば、ラヴェル「水の戯れ」では会場を一気に光り輝く海へと一変させる。その素晴らしさはモーツァルトにしか興味のないブノワ氏でさえ「ラヴェルっていいな」と呟くほど。たしかに音との戯れのなかから生まれるのだめの音色は、繊細なハーモニーが万華鏡のように移ろう「水の戯れ」やモーツァルトにぴったりなのかもしれない。

池田昭子 Shoko Ikeda (c) Yasuhisa Yoneda

 リサイタルで成功を収めた夜の城でのパーティーでは、千秋がヴァイオリンでブノワ家特設の弦楽五重奏団に加わって「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を披露。それに負けじと黒木のソロで、オーボエ四重奏曲が続く。モーツァルトがオーボエの名手フリードリヒ・ラムのために書いた作品で、オーボエの技巧と音色を存分に味わうことのできる傑作だ。

 オーボエといえば、この音楽会の企画者であり、ご案内役を務めるのは茂木大輔である。長年にわたりNHK交響楽団首席オーボエ奏者を務め、『のだめ』では原作の取材協力、ドラマ・映画版のクラシック音楽監修を担当した。また、オーボエ四重奏曲のソロには、現在N響のオーボエ&イングリッシュホルン奏者であり、ドラマ版で演奏の吹き替えを担当していた池田昭子が登場する。

茂木大輔 Daisuke Mogi

 そしてピアニストはといえば、ホールのある調布市在住の高橋多佳子。第12回ショパン国際ピアノコンクールで第5位に入賞し、日本を代表するピアニストとして第一線で活躍する存在であり、『のだめ』の音楽会の全国ツアーに参加したこともある。比類なきテクニックに裏打ちされた演奏からは想像がつかないチャーミングな人柄は、のだめに重なるところがあるような…?

高橋多佳子 Takako Takahashi (c) Shinichiro Saigo

 その高橋によるショパンピアノ協奏曲第1番は、今回の音楽会のもうひとつのハイライトに違いない。ショパン・コンクールでファイナルに残ったコンテスタントが、オーケストラとともに演奏するのがこの協奏曲(第2番もあるが、第1番を選ぶコンテスタントが圧倒的に多い)。『のだめ』では、指揮者シュトレーゼマンのロンドン公演で、のだめがソロを務めて世界デビューを飾るシーンに登場する。今回は、ザルツブルク゠モーツァルト国際室内楽コンクール第3位入賞の実績をもち、若手実力派筆頭格のタレイア・クァルテット、そして岡本文音(コントラバス)との共演で、室内楽版の第2楽章・第3楽章を聴かせてくれる。

タレイア・クァルテット(石崎美雨・二村裕美・渡部咲耶・山田香子)Thaleia Quartet
岡本文音 Ayane Okamoto (c)SmileStyleStudio

 このほか、生命感あふれるラヴェル弦楽四重奏曲(抜粋)や、お馴染みのサン゠サーンス「動物の謝肉祭」からのナンバーも。スクリーンには美しいイラストが投影され、わかりやすい解説もつく『のだめ』愛に満ちたコンサート。一方で『のだめ』ファンならずとも、この出演者なら聴いてみたいと思える充実のプログラムである。

文:原典子

MESSAGE FROM TAKAKO TAKAHASHI

調布での《のだめ音楽会》も5回目ですね!
前半はブノワ家に招かれたのだめや黒木君や千秋先輩達が演奏した曲をお届けします。 ピアノのソロや室内楽の響きを楽しんでくだサイ!
後半は、のだめロンドンデビューの曲、ショパンのピアノ協奏曲第1番(室内楽版)とサン゠サーンスの「動物の謝肉祭」をお届けします。

茂木大輔さんのトークと共に、のだめワールドをご堪能いただけます。
ぜひいらして下さいね!

高橋多佳子

生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会 Vol.5 室内楽版
10/2(土)15:00 調布市グリーンホール


高橋多佳子|ピアノ
池田昭子(NHK交響楽団)|オーボエ
タレイア・クァルテット|弦楽四重奏
(第1ヴァイオリン:山田香子 第2ヴァイオリン:二村裕美 ヴィオラ:渡部咲耶 チェロ:石崎美雨
岡本文音|コントラバス
茂木大輔(「のだめカンタービレ」取材協力、ドラマ・映画クラシック音楽監修)|企画・ご案内

モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525より第1楽章
モーツァルト:きらきら星変奏曲 ハ長調 K.265
モーツァルト:オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370
ラヴェル:水の戯れ
ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調より第2楽章
サン゠サーンス:「動物の謝肉祭」より
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11(室内楽版)より第2楽章・第3楽章

■チケットCHOFU 
◇TEL 042-481-7222(9:00~19:00第4月曜日休み・変則あり) 
◇インターネット予約(※要会員登録、24時間無休)
 https://www.e-get.jp/cul_bun/pt/
◇取扱い窓口 
・調布市グリーンホール  (9:00~19:00毎週月曜日休館、祝日の場合は翌日・変則あり) 
・調布市文化会館たづくり (9:00~21:30毎月第4月曜日および翌日休館・変則あり) 
・調布市せんがわ劇場   (9:00~19:00毎月第3月曜日および翌日休館・変則あり)

■e+(イープラス)
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