仲道郁代、2020年10月のリサイタルのライブ録音。「ドビュッシーの見たもの」というタイトルには「見る、聴くという感覚の先にあるものを探求したい」との想いが込められているという。空間に溶け込むような音、弾けるような音など、多彩な音色により生み出される音楽は、立体的。前奏曲集第1巻「西風の見たもの」「沈める寺」では無限に広がる空間が、映像第1集では、特別な光や肌触りが感じられる。「喜びの島」の成熟したドラマも見事。一つひとつの小品がまったく異なる感覚、気分を誘発する。まさに視覚、聴覚とは別のところが刺激されるアルバム。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2021年7月号より)
【information】
SACD『ドビュッシーの見たもの 前奏曲集Ⅰ・映像Ⅰ/Ⅱ・喜びの島/仲道郁代』
ドビュッシー:前奏曲集 第1巻、映像 第1集・第2集、喜びの島
仲道郁代(ピアノ)
収録:2020年10月、東京文化会館(小)(ライブ)
ソニーミュージック
SICC 19053 ¥3300(税込)