【CD】藤倉大:Akiko’s Piano 広島交響楽団2020 「平和の夕べ」コンサートより/下野竜也&広響

 被爆から75年の節目の広響「平和の夕べ」コンサートの模様を収めた1枚。原爆で亡くなった河本明子の愛奏ピアノ(修復された被爆楽器)にインスパイアされた藤倉大の協奏曲が柱となっている。緊張感漂う中にも柔らかなこの曲を、萩原麻未が鮮烈かつ美しく奏で、明子のピアノで弾いたカデンツァではとりわけ強いインパクトを与える。当曲から「カヴァティーナ」への移行がまた絶妙。「亡き子をしのぶ歌」の藤村実穂子の深い歌唱や、「シャコンヌ」の迫真性も胸を打つ。下野竜也&広響も真摯な好演。記録的な意義はもとより音楽的にも傾聴すべきアルバムだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年5月号より)

【information】
CD『藤倉大:Akiko’s Piano 広島交響楽団2020 「平和の夕べ」コンサートより/下野竜也&広響』

藤倉大:ピアノ協奏曲第4番「Akiko’s
Piano」/ベートーヴェン:カヴァティーナ(弦楽合奏版)/マーラー:歌曲集「亡き子をしのぶ歌」/J.S.バッハ(齋藤秀雄編):シャコンヌ(管弦楽版)

下野竜也(指揮) 広島交響楽団
萩原麻未(ピアノ)
藤村実穂子(メゾソプラノ)

収録:2020年8月、広島文化学園HBGホール(ライブ)
ソニーミュージック
SICX-10011 ¥3300(税込)