《ローエングリン》 & びわ湖ホール四大テノール・フォーエバー

待望の福井敬も登場! 《ローエングリン》全曲と「四大テノール・フォーエバー」

 音楽ファンなら知らぬ者のないテノールの第一人者、福井敬。ベテランでありながら最近とみに若々しさを増し、輝かしい声にさらに磨きをかけて絶頂期を迎えている感がある。その福井が3月にびわ湖ホールにやってくる。まずはプロデュースオペラ《ローエングリン》のタイトルロール。福井にとってこの役は3度目であるが、最初は1997年新国立劇場開場記念公演。その時指揮を執った若杉弘がびわ湖ホール芸術監督となり、福井は若杉の振る《ドン・カルロ》から全部で7作のヴェルディ・シリーズに出演した。同ポストが沼尻竜典監督に変わってからも《オテロ》《こびと》などに登場し、びわ湖ホールとのゆかりは深い。

 福井は《ローエングリン》を演じるたびに「彼は一体何者?」と思い悩むという。「聖杯の騎士であり、パルジファルを父とし、誰よりも剣に優れ、女性を一途に愛する。ある意味完璧な存在…そんな彼が唯一制することができなかったものが、エルザの心です。ローエングリンが何者であるかは、音楽を創り上げることで、初めてわかるのかもしれない。それを楽しみに励みたい」と今回の出演にも意気込む。

 指揮は、ワーグナーで高い評価を得ている沼尻。歌唱陣は横山恵子、妻屋秀和、小森輝彦、黒田博、谷口睦美ら同ホール常連の豪華キャストが揃う。ステージングは粟國淳。同作品は「合唱オペラ」と呼ばれるほど合唱が大活躍するが、びわ湖ホール声楽アンサンブルがその重責を担う。管弦楽はこれまでもワーグナー演奏で実績を積んだ京都市交響楽団が引き締める。

 さて、福井はもう一つの演奏会「びわ湖ホール四大テノール・フォーエバー」にも出演する。関西で大人気のうえ、「関西元気文化圏賞ニューパワー賞」を受賞したびわ湖ホール四大テノール(清水徹太郎、二塚直紀、竹内直紀、山本康寛)。近年はNHKなどで何度も放映されたこともあって人気急上昇、知名度も活動エリアも全国レベルとなりつつある。ところが昨年4月23日、メンバーの一人である二塚直紀が43歳の若さで急逝した。人柄もよく、輝かしい美声で、オペラでもソロでも活躍していただけに、その若い才能を惜しむ人は多い。今回の副題に「二塚直紀くんに捧ぐ」がついているのは、四大テノールのメンバーそれぞれの彼への思いがこもっているからだろう。

 そんな彼らに「ウルトラ・スーパー・スペシャル・ゲスト」福井敬が加わったら一体どうなることか。初共演といってもテノール同士で気心も知れていて、素晴らしいアンサンブルになることは間違いない。「四大テノール」特別バージョンは必ずや日本を元気にしてくれるはずだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2021年3月号より)

ワーグナー:歌劇《ローエングリン》(セミ・ステージ形式、全3幕、新制作)
2021.3/6(土)、3/7(日)各日14:00 びわ湖ホール

びわ湖ホール四大テノール・フォーエバー
2021.3/28(日)14:00 びわ湖ホール

びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 
https://www.biwako-hall.or.jp/