エリソ・ヴィルサラーゼ(ピアノ)

11年ぶりのリサイタルが実現!

(C)能登直
(C)能登直

 エリソ・ヴィルサラーゼは、教鞭を執るモスクワやミュンヘンの音楽学校の門下から、ボリス・ベレゾフスキーをはじめとする名手を輩出している。著名なコンクールの審査員も務めているので、彼女を教育者と思っている人もいるかもしれない。だがヴィルサラーゼはロマン派の演奏の系譜を現代に伝えるロシア・ピアニズムの継承者で、ネイガウスらの元で学び、リヒテルからも多大な影響を受けた大家である。チャイコフスキー・コンクールやシューマン・コンクールで高位入賞を果たし、その後はグートマンをはじめとするトップ・アーティストや指揮者たちと共演を重ねてきた。そのタッチは正確なだけでなく、多彩かつ豊かさを極める。
 ロシア・ピアニズムの紹介に心を砕いてきたすみだトリフォニーホールで、そのヴィルサラーゼがリサイタルを開く。実に11年ぶりだ。プログラムも凝りに凝っている。シューマンの交響的練習曲、ブラームスのピアノ・ソナタ第1番、さらにモーツァルト(ドゥゼードの「ジュリ」の「リゾンは眠った」による9つの変奏曲」)とハイドン(アンダンテと変奏曲 ヘ短調)。後者2曲は頻繁に演奏される曲ではないが、「交響的練習曲」が主題に基づく変奏、ブラームスの第2楽章も主題とその変奏になっていることを考えれば、リサイタルを貫く縦糸も自ずと見えてくるだろう。ヴィルサラーゼの指先が、一つの主題をどんなに豊かに膨らませ、どんなに豪華に着飾らせるか、心して耳を傾けようではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年2月号から)

★2月3日(月)・すみだトリフォニーホール Lコード:31601
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
http://www.triphony.com