デビュー30周年を迎えた三舩優子、8年ぶりのソロアルバム。三舩にとってリストは子どもの頃から大切にしてきた作曲家だというが、実際、アルバムに収められた作品を慈しむような深い音色から、その想いが伝わってくる。荘厳な輝きを放つ鐘を思わせる音で幕をあける「ウィリアム・テルの聖堂」、起伏に富みつつもおおらかな音楽の運びが天上に誘う「オーベルマンの谷」、孤独な人間の息遣いのようなものを感じる「郷愁」。巡礼の年 第1年「スイス」全曲を通じ、若き日の華やかな活動のために誤解されがちなリストの本質的な部分、光と闇をしっかりと見せてくれる。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2021年2月号より)
【information】
SACD『リスト:巡礼の年 第1年「スイス」/三舩優子』
リスト:巡礼の年 第1年「スイス」
三舩優子(ピアノ)
妙音舎
MYCL-00001 ¥3200+税