東京オペラシティ B→C 藤原功次郎(トロンボーン)

多彩な響きを介した、好漢の“祈り”

 彼の演奏は本当に表情豊かだ。それはトロンボーンの概念を超えている。そんな彼=藤原功次郎が、東京オペラシティ名物《B→C》の2014年幕開けを飾る。1985年生まれの藤原は、東京芸大を首席卒業後、教員を経て2009年日本フィルに入団し、翌年首席奏者となった。12年には木管・金管奏者が共に挑むインタームジカ国際ソロイストコンクール(オーストリア)で優勝。欧州各地の楽団やベルリン・フィルのアカデミー団員等が集う中での快挙だった。13年にはウィーン響の日本ツアーで急遽首席奏者を務めた。
 「トロンボーンは祈りと関係が深い」と彼は言う。今回のプログラムはその“祈り”がテーマだ。「教員時代にミサでオルガンを奏で歌った」バッハの3作品に続くのは、「メチャクチャ大好き」な現代音楽。9.11の同時多発テロに因むイウェイゼンの作品、デュティユーの聖歌、「さくらさくら」に基づくドムローズ「サクラ」、「初めて買ったソロの楽譜」である池辺晋一郎「ストラータⅥ」、2014年NHK大河ドラマの音楽を担当する菅野祐悟への委嘱新作「Cosmic Note」、そして前記のコンクール優勝時に演奏した、同楽器の魅力満載のアッペルモント「カラーズ」等々、興味深い楽曲が並ぶ。
 彼はトロンボーンの魅力を、「パワーを秘めていて、吹く人も聴く人も元気になれる。不器用さ、温かさ、お茶目さ、優しさ、強さ…まさに人間らしさを感じる楽器。トロンボーンに興味のない人でも触れてみてほしい」と語る。“祈り”は、先の大震災、そして大阪公演(阪神・淡路大震災の日に行う)に向けたものでもある。広く一般の聴衆にぜひ聴いて欲しい公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年1月号から)

東京公演
★2014年1月21日(火)・東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp

大阪公演
★2014年1月17日(金)・大阪/ザ・フェニックスホール
問:大阪アーティスト協会チケットセンター050-5510-9645
http://phoenixhall.jp/