ウィーン夏の風物詩「サマーナイト・コンサート」が、2020年も時期をずらして開催に至った。それぞれ多忙の象徴のようなゲルギエフとウィーン・フィルだが、活動制限の影響で逆に余裕ができたのか、例年以上に高精度で練り上げられた、濃厚な熱演が実現。「愛」をテーマとして、得意のオペラ楽曲ばかりか、初奏の「ドクトル・ジバゴ」まで同楽団独特の厚いハーモニーと多彩な美音が発揮され、圧巻の名演ぞろい。カウフマンも圧倒的な魅力とパワーで、特にカラフの“声の”イケメンぶりは尋常ではない。一聴すべきアルバムであり、困難をこえた貴重な記録のひとつである。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年1月号より)
【information】
CD『ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2020』
ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より〈愛の音楽〉(ストコフスキー編)(抜粋)/ジャール:「ドクトル・ジバゴ」組曲/プッチーニ:歌劇《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉/J.シュトラウスⅡ:ワルツ「ウィーン気質」 他
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
ヨナス・カウフマン(テノール)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
収録:2020年9月、ウィーン(ライブ) 他
ソニー・ミュージックエンタテインメント
SICC-2160 ¥2600+税