同時期にフランスで学び、卓越したソリスト・室内楽奏者として活躍する同い年の名手たちが、2011年に結成したピアノ・トリオ。クララ・シューマンの冒頭から、溢れ出すがごときロマンティシズム。しかし、決して感情に溺れることなく、音楽創りにおける各々の立ち位置をきっちりと見極め、丁寧に音楽を紡いでゆく。だからこそ、スコアの随所にしたためられた繊細さが浮き彫りに。しかも、続くドヴォルザークでは、微妙に異なる色彩を見事に表現。「空間、時間、宇宙」などを意味するグループ名に込めた、「自在な音楽表現を人々と共有したい」との彼らの思いがつぶさに伝わってくる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年12月号より)
【information】
CD『トリオ・エスパス』
C.シューマン:ピアノ三重奏曲 ト短調/ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第3番
トリオ・エスパス
【相川麻里子(ヴァイオリン) 植木昭雄(チェロ) 佐藤勝重(ピアノ)】
コジマ録音
ALCD-7257 ¥2800+税