純白の世界。だれよりもピアノの清らかな美しさを引き出す辻井伸行が、コロナ禍の時代に、すべてのひとに「寄り添う」アルバムを編んだ。クラシック作品はメロウな名品ばかりが選ばれ、弱音のタッチの繊細さが実にすばらしく、豊かな残響までとらえた録音も相まって、なによりの癒しの時間になる。さらに、邪念のかけらもない辻井自身の楽曲に、ミニマル音楽とジブリ系の両面を楽しめるような久石譲、雄大な感動を誘う菅野よう子、それぞれの近作が豊穣な広がりを与えてくれる。不安の途切れない時代、まっすぐに聴くひとに「寄り添ってくれる」辻井の存在は、ますます貴重になる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『笑顔で会える日のために〜あなたに寄り添うピアノ作品集/辻井伸行』
辻井伸行:笑顔で会える日のために/ドビュッシー:夢/ショパン:ノクターン第20番「遺作」/ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏/久石譲:The Dream of the Lambs/菅野よう子:RAY OF WATER piano solo main theme 他
辻井伸行(ピアノ)
ヴァシリー・ペトレンコ(指揮)
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団 他
エイベックス・クラシックス
AVCL-84111 ¥3000+税