すでに指揮者としても確固たる評価を得ている久石譲がフューチャー・オーケストラ・クラシックスと今回世に問うたのはブラームスの交響曲第1番。なるほど指揮者の意図は明確で、それはロマンティックに肥大した音像からの脱却。極めて速いテンポを採用し、序奏から明らかなように対位法的な音構造を明晰に抽出している。各楽器の「発声」もキビキビと明確、これが第2楽章で効果的に生きる。さらには要所での有機的なリズムの繋がりも感じられ(例えば序奏と第2楽章終結近くのヴァイオリンソロ/ホルン/ティンパニの箇所…)、40分に満たぬテンポで駆け抜ける、だけではない目配せも十分。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年9月号より)
【information】
SACD『ブラームス:交響曲第1番/久石譲&フューチャー・オーケストラ・クラシックス』
ブラームス:交響曲第1番
久石譲(指揮)
フューチャー・オーケストラ・クラシックス
収録:2020年2月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00733 ¥3200+税