古典から現代までを弾きこなす驚異の中学3年生
14歳の新星、現る。今年8月ウィーンで行われたロザリオ・マルチアーノ国際ピアノコンクールで第1位に輝き、併せてワーグナー・ヴェルディ賞を受賞した藤田真央は、現在埼玉県のコロンビアインターナショナルスクールに通う中学3年生。藤田の実力は、2009年の日本クラシック音楽コンクール、10年の全日本学生音楽コンクールでの優勝、才能ある子ども奏者がソリストに選ばれる東京交響楽団の「こども定期演奏会」でプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を演奏したことなどで実証済みだ。そんな藤田が「ずっとやってみたかった」と語る2時間のソロリサイタルが、12月に津田ホールで開催される。
「コンクール優勝記念ということで急遽9月にお話をいただき、すぐに『やります!』とお返事しました」
にこやかにゆったりと語る藤田だが、その瞳には明るさと意欲が宿る。プログラムはベートーヴェンのピアノソナタ第7番で開始。 「ベートーヴェンの初期のソナタのうち7番だけ弾いたことがなかったので、今回挑戦することにしました。1曲目でリサイタル全体の流れが作られると思うので、とても大事に考えています」
続くリストの超絶技巧練習曲第10番、ワーグナー=リストの「タンホイザー序曲」はコンクールで演奏したため「安心感のある曲目」と語る。ウィーン在住の現代作曲家カラストヤノヴァ=ヘルメンティンの「リンタリス」はコンクール課題曲として書き下ろされた難曲で日本初演となる。
「切れ味のあるリズムが特徴的で、いきなり音が跳躍します。僕は激しい動きのある作品が大好きです。9歳から師事している松山元先生はバロックから現代までたくさんの作曲家の作品を弾かせてくれました。小学生の頃から三善晃さんや野平一郎さんのピアノ曲にも取り組んできたので現代曲に抵抗はありません」
プログラムの最後にラフマニノフの「6つの楽興の時」を全曲取り上げる。
「6曲すべて表情が違うので、気持をスイッチさせて鮮やかに演奏したいと思います。第2曲は改訂版もありますが、左手がまるで木枯らしのように動き回る原典版が気に入っているのでそちらを使用します」
ピアノを好きになったのは「先生が貸してくれたミケランジェリ、ギレリス、バックハウスなどのCDをたくさん聴いたから」とのこと。将来の夢は? と訊ねると「それはやっぱり…ショパン・コンクールでの優勝です」とほのぼのとしたトーンで語る。頼もしい笑顔に期待が膨らむ。また、11月末にはデビュー盤『MAO FUJITA』もリリース。こちらも要チェックだ。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2013年12月号から)
★12月7日(土)・津田ホール
問 プロアルテムジケ03-3943-6677
http://www.proarte.co.jp
【CD】『MAO FUJITA』
ナクソス・ジャパン
NYCC-10001 ¥2625