北ドイツ・オルガン楽派の祖スヴェーリンク、その弟子であるシャイトとシャイデマンは、大バッハにとっての“源流”。名手・椎名雄一郎が、コラールや他国の様式を踏襲して書かれた作品を、同時代に建造された銘器シュニットガーで弾く。確かな技巧に裏付けられた誠実な演奏。レジストレーション(音栓=音色の選択)など、決して奇を衒うことはない一方、ナイチンゲール(鳥の囀り)の効果も上品に使い、愉悦も存分に。自身は生涯にわたりルター派と関わりをもたなかったスヴェーリンクのコラールに基づく楽曲は、教育用とも考えられる。それでも、背景にある、祈りの感情を映し出すように奥が深い。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年7月号より)
【information】
CD『バッハの源流を求めて―三大「S」スヴェーリンク、シャイト、シャイデマン/椎名雄一郎』
スヴェーリンク:いと高き神にのみ栄光あれ、エコー・ファンタジア イ調、第9旋法によるリチェルカーレ/シャイト:主にして日なるキリストよ、ベルガマスカ、強と弱の2段鍵盤のエコー/シャイデマン:キリストは死の縄目につながれたり、ガリアルダ ニ調、プレアンブルム ニ調 他
椎名雄一郎(オルガン)
コジマ録音
ALCD-1192 ¥2800+税