新しい時代のベートーヴェンを近現代の力作とともに
今年はベートーヴェン・アニヴァーサリー。その作品をどう解釈するかは演奏家にとっての試金石だ。ノット&東響はポイントごとに交響曲を取り上げてきたが、この「第2番」をもって全曲踏破となる。
昨年末に聴いた「第九」はとても印象的だった。強力な東響コーラスに対し弦の規模をやや絞り、小気味よいテンポでシャープな音像を実現。終楽章ではエネルギーを一気に爆発させ、現代人の感覚に訴えかけるドラマに仕立てていた。
こうしたアプローチは「第2番」にも生かされるだろうが、ノットの場合、プログラムのカップリングにも深い洞察が含まれている。この曲はベートーヴェンの難聴が進んだ時期に書かれているが、プライベートでの悩みが信じられないほど、活気にあふれたスポーティーな作品だ。今回冒頭に置かれるのはストラヴィンスキーの新古典主義時代のバレエ音楽「カルタ遊び」。両者が共通して持つ身体性に着目しているのではないか。
間に挟まれる酒井健治のヴァイオリン協奏曲「G線上で」は、第23回芥川作曲賞の受賞を受けて書かれた委嘱作だ。ノットは酒井のキャリアの初期から作品を委嘱するなど、その才能を高く買ってきた。独奏は2016年のモントリオール国際音楽コンクールで1位を獲得したライジングスター、辻彩奈。昨年のノット&スイス・ロマンド管の来日公演で、若さに似合わぬ落ち着きと風格を漂わせる名演を聴かせた。
次世代を担う日本人を起用した現代曲をパズルの一枚として、ストラヴィンスキーとベートーヴェンの間に挟むと、さて、どんな完成図が出来上がるだろう?
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年3月号より)
*出演を予定しておりました音楽監督ジョナサン・ノットは、新型コロナウイルス感染症対策の影響により、来日ができなくなりました。 なお本公演は、出演者の変更、引き続き状況を注視しながら調整を進めております。(4/1主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
東京オペラシティシリーズ 第114回
2020.4/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp