現役の彼女を知るのはざっと還暦以上の世代。でもフランス歌曲の第一人者として、多くのファンがその名前を知っているはず。1937年日本人声楽家として初めてパリ国立音楽院入学。戦後フランス楽壇の、大袈裟でなく第一線で活躍。52年に帰国後はフランス歌曲の普及に奔走した。《ペレアスとメリザンド》もプーランク《人間の声》も日本初演はこの人。当盤は、61年から70年までの貴重なプライベート録音。美しい佇まいの、凛とした清潔な声。収められた歌詞の朗読を聴けば発音・発語の美しさも亮然。50年以上も前にこのレベルで歌う日本人歌手がいたことに改めて驚き、誇らしく思う一枚。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年11月号より)
【information】
CD『古沢淑子ふたたび―フランス近代歌曲集―/古沢淑子&井上二葉』
ドビュッシー:星の夜、美しい夕暮/ラヴェル:孔雀/サティ:青銅の像/カプレ:烏と狐、蝉と蟻/ベイツ:ミラボー橋/オーリック:僕はおまえにそう云った/カナル:大いなる黒き眠りは/プーランク:歌曲集「動物小話集」全曲、同「よしなし草」全曲/アーン:ささげもの 他
古沢淑子(ソプラノ)
井上二葉(ピアノ)
収録:1961年4月、古沢淑子スタジオ(ライヴ) 他
ナミ・レコード
WWCC-7905 ¥2500+税