【CD】トッカータ・ブラジリス/熊谷俊之

 南米の作品を中心に編んだ。アダルトなピアソラに始まり、陽気で開放的なヴィラ=ロボス、洒脱なポンセ、ノスタルジックなコントレラス&アサド作品。通底するものを持ちながらも、それぞれに趣向が異なった選曲で、心地よく聴き通せる。ジャズやロック、エスノ的なセンスまで熊谷の幅広い才能が窺われるが、中でも世界初録音となるマルロス・ノブレの「ソナタ」は耳を引いた。クロマティックな動きに力強いアクセントが加わる冒頭楽章、寂寥感を湛えた抒情的な中間楽章、アルバム・タイトルに取られたアクロバティックなフィナーレ。技巧も構成力も問われる大作を見事にまとめている。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年10月号より)

【information】
CD『トッカータ・ブラジリス/熊谷俊之』

ピアソラ:コンパードレ(伊達男)、天使の死/ヴィラ=ロボス:「ブラジル民謡組曲」より〈マズルカ・ショーロ〉〈ショティッシュ・ショーロ〉〈ワルツ・ショーロ〉〈ガヴォット・ショーロ〉/ノブレ:ソナタop.115/ポンセ:エストレリータ、主題と変奏と終曲/コントレラス:感覚と理由〜ビクトル・ハラ讃歌〜/アサド:思い出

熊谷俊之(ギター)

マイスター・ミュージック
MM-4063 ¥3000+税