国内屈指の名ヴィオリストで、東京フィルの首席奏者としてもおなじみの須田祥子。彼女の名技と楽器への愛が詰まった「ビオラは歌う」シリーズ第3弾。シューベルトや日本の歌の深い味わいに、ヴィオラこそ人間の声に近いのだと実感。「魔王」の変幻自在の音色も凄い。「ロメオとジュリエット」は新発見のヴィオラ作品に出会えたような喜びを覚える、名編曲。特に抒情的な〈前奏曲〉〈バルコニーの情景〉はこちらが原曲?と錯覚するほど美しく感動的。クラークのソナタは、技巧的ながらも歌に満ちる名品。松本望の絶妙なピアノと、温もりある名録音も特筆したい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年8月号より)
【information】
CD『ビオラは歌う3/須田祥子』
シューベルト:魔王、君こそは憩い/プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」より/小林秀雄:落葉松/レベッカ・クラーク:ヴィオラ・ソナタ/山田耕筰:赤とんぼ
須田祥子(ヴィオラ)
松本望(ピアノ)
N&F
MF25903 ¥2800+税