ライナー・ホーネック(ヴァイオリン/紀尾井ホール室内管弦楽団首席指揮者)

ベートーヴェンへの取り組みで示す音楽家としての矜持

©ヒダキトモコ
 紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)が首席指揮者ライナー・ホーネックとの契約を2022年3月まで延長することを発表した。ウィーン・フィルの現役コンサートマスター。17年から3年契約で第2代首席指揮者に就任した。

「一緒の時間を重ねるなかで、私が求めることを言葉やヴァイオリンを弾いて示すことが、あまり必要でなくなりました。それは大きな変化です。そしてなにより唯一無二だと思っているのが、潤沢なリハーサル時間。こんなケースはヨーロッパでもありません」

 契約2期目の抱負を尋ねると、「目標やヴィジョンを言葉で語るよりも、一つひとつのコンサートを、可能な限り素晴らしいものにしたい。そうすれば、発展というものは自ずと生まれてくると思う」と、誠実な姿勢を示した。

 次の出演は9月定期。メインはベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」全曲だ。

「この作品は不当にないがしろにされていると思います。序曲は有名ですが、全曲が演奏される機会はほとんどない。ウィーン・フィルでも、少なくとも私が在籍してから(1981年正式入団)は演奏していません。その理由のひとつには、バレエの物語を知らずに聴いたのでは、長すぎて理解しづらい、良さがわかりにくいということがあると思います」

 そこを埋めるために、失われたバレエ台本をベートーヴェン研究家の平野昭が創作し、俳優の西村まさ彦が朗読する。

 年が明けて2020年2月定期は、生誕250年にちなんだオール・ベートーヴェンで、ヴァイオリン協奏曲と交響曲第7番というプログラム。協奏曲はもちろんホーネックの独奏、そして彼自身も初めてという指揮者なしでの演奏だ。

「この作品を指揮者なしで演奏することはあまりないと思います。でも、できないわけではない。とりわけ、指揮者に依存せず演奏することに慣れている経験豊富なオーケストラであれば。加えて、リハーサル時間がたっぷり取れることが大切です。KCOにはその条件が揃っています。そして、私が重要視しているのは、この協奏曲を室内楽的にとらえるということです。そもそも本作では独奏ヴァイオリンが、オーケストラに寄り添ったり、伴奏のような役割を担うところが非常に多いのですね。それを考えると、もしかすると指揮者がいないことがメリットになるのではないかとさえ思っています」

 来期については夏以降の発表とのことだが、1シーズンに3プログラム6公演を指揮する予定。両者の関係のさらなる深まりに注目しよう。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年7月号より)

紀尾井ホール室内管弦楽団
第118回 定期演奏会 
2019.9/27(金)19:00、9/28(土)14:00 紀尾井ホール

第120回 定期演奏会 
2020.2/14(金)19:00、2/15(土)14:00 紀尾井ホール 

※第120回は11/2(土)発売
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp/