ギター界の大家によるバッハの編曲ものシリーズが、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番、同パルティータ第2番を中心に編んだ本6作目をもってひとまず完結。聴きなれた旋律がヴァイオリンでは想像で補うよりない和声に支えられ、ポジションの複雑な切り替えもなんのその、抜群の安定感で聴き手を包み込んでいく。パルティータのジーグではそれまでの落ち着いた歩みが、一気に激しく情熱的なステップに変わり、間髪いれずに始まるシャコンヌの荘厳さが際立った。そこからは多彩な音色、タッチの細かい変化、ここぞという場面で見せる気迫に魅了された。べテランの名に恥じない仕上がりだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年7月号より)
【Information】
CD『パストラーレ J.S.バッハ作品集 6/福田進一』
J.S.バッハ:「ゴルトベルク変奏曲」より〈アリア〉、ソナタ ト短調BWV1001、「パストラーレ」より〈アリア〉、パルティータ ニ短調BWV1004、コラール前奏曲「イエスよ、私は主の名を呼ぶ」、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」より〈プレリュード ハ長調〉
福田進一(ギター)
マイスター・ミュージック
MM-4058 ¥3000+税