クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団

快進撃中の指揮者と楽団の邂逅がもたらす“異次元級”の名演


 出色のパフォーマンスが続いた、東京交響楽団の今シーズン(2018/19年度)の定期演奏会。その締めくくりとなる3月定期(東京と川崎)は、クシシュトフ・ウルバンスキが3年ぶりに登場。ベルリン・フィルをはじめ世界中のトップオーケストラに客演し、現在NDRエルプフィルの首席客演指揮者を務めるなど、ますます存在感を高めている。

 しかも演目は、ショスタコーヴィチの交響曲第4番。モダニズムが集約された異様な場面の連続、大編成による激烈なエネルギーの爆発、そして全体を覆う不思議なペシミズム——作曲者最大の問題作にして、異形の傑作だ。リハーサルまで暗譜で行うほど作品に没入し、切れ味鋭いサウンドでその本質を抉り出す、ウルバンスキの指揮でこそ聴きたい大作である。東響も12月、ノット指揮でヴァレーズ「アメリカ」の“美しい爆音”による驚異的な名演を披露し、研ぎ澄まされた音響に磨きがかかっている。快進撃中の指揮者と楽団の融合で、 “熱演”という言葉を超えた、異次元のショスタコーヴィチ体験への期待が大いに高まる。

 演奏会前半は、16歳でベルリン・フィルと共演して以来、世界の最先端を走り続ける俊才ヴェロニカ・エーベルレをソリストに迎え、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」を。彼女の深い美音で名作を味わえるのは嬉しい好機。ただ、鬼才ウルバンスキとの共演となると、どんな演奏になるのかは全く予想できない。前後半の対比を含め、ライヴのスリリングな醍醐味を堪能できる公演となりそうだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年2月号より)

川崎定期演奏会第69回
2019.3/23(土)14:00 カルッツかわさき
第668回定期演奏会
2019.3/25(月)19:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
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